2026年10月14日(水)19:00、柏レイソルはACLのリーグステージ第2節で、タイリーグの古豪ポートFCを柏サッカースタジアムに迎える(柏レイソル公式)。
柏にとっては8年ぶりのACL復帰戦の相手・全北現代戦(9/16・アウェイ)に続く、アジアの舞台での初ホーム戦。
相手はタイの首都バンコクに本拠を置き、「タールア」(タイ語で「港」)の愛称で親しまれる同国屈指の人気クラブだ。1967年創設の老舗で、昨季終盤から若手指導者サラウット・トレーパン監督の下で生まれ変わったその現在形を、タイメディアの情報も交えて徹底整理する。
1. 対戦カードと大会フォーマットのおさらい
AFCチャンピオンズリーグエリート2026/27は今大会から本戦が24クラブから32クラブに拡大。
東西それぞれ16クラブが1つのリーグを形成し、各クラブ8試合を戦って上位8クラブがラウンド16へ進出する。
優勝チームにはFIFAインターコンチネンタルカップ2027とFIFAクラブワールドカップ2029への出場権が与えられる(Wikipedia)。
| ポートFC | 柏レイソル | |
|---|---|---|
| 出場資格 | 2025-26タイ・リーグ1 2位 | 2025年J1リーグ2位 |
| ACL出場 | 2021年大会以来(ACLE初挑戦) | 5回目(前回2018) |
| 抽選ポット | ポット3 | ポット3 |
ポートは昨季タイ・リーグ1でブリーラム・ユナイテッドに次ぐ2位に入り、リーグカップも制して2冠に迫るシーズンを送った。
AFCチャンピオンズリーグ(エリート)への出場は2021年大会以来で、この大会への出場は初めてとなる。
一方、2024-25シーズンにACL2(2部相当)に出場していたため、「ACL帰還」という意味では新しさよりも懐かしさが勝つクラブだ。
2. ポートのリーグステージ日程 ― 日本勢5クラブと戦う「アジアの中継地点」
8月18日の抽選でポートは東地区E列に入り、リーグステージ8試合の相手が確定した(抽選グリッド)。
- ホーム:ヴィッセル神戸(9/15)、北京国安、鹿島アントラーズ、京都サンガF.C.
- アウェイ:柏レイソル(10/14)、ガンバ大阪、ジョホール・ダルル・タクジム、上海海港
つまりポートは日本勢5クラブ(神戸・柏・G大阪・鹿島・京都)と対戦する。
これは前回記事で取り上げた全北現代と同じく、「日本勢ひとまとめシリーズ」の一角。
タイのクラブが短期間で日本5クラブと相まみえるのは初めてのことで、日本のファンにとっては「タイ・リーグの現在形」を知る恰好の機会になる。
柏のリーグステージ全日程(柏レイソル公式)は以下の通り。
| 節 | 日程 | カード | 会場 |
|---|---|---|---|
| MD1 | 2026/9/16(水)19:00 | vs 全北現代(A) | 全州ワールドカップスタジアム |
| MD2 | 10/14(水)19:00 | vs ポートFC(H) | 柏サッカースタジアム |
| MD3 | 10/27(火)21:15 | vs ラーチャブリー(A) | ラーチャブリー・スタジアム |
| MD4 | 11/3(火・祝)19:00 | vs 大田ハナシチズン(H) | 柏サッカースタジアム |
| MD5 | 11/24(火)16:45 | vs ニューカッスル・ジェッツ(A) | セントラルコーストスタジアム |
| MD6 | 12/1(火)19:00 | vs コンアン・ハノイ(H) | 柏サッカースタジアム |
| MD7 | 2027/2/10(水)19:00 | vs ブリーラム(H) | 柏サッカースタジアム |
| MD8 | 2027/2/16(火)19:00 | vs 浦項スティーラーズ(A) | 浦項スティールヤード |
柏にとっては全北戦の翌月に迎えるアジアの戦いの第2ラウンドであり、アウェイ(全北)→ホーム(ポート)という流れになる。
ポートの視点ではMD1(神戸戦・ホーム)を終えての柏戦(アウェイ)。
両チームともにACLの舞台で手の内を見せ合った後だけに、戦術的な駆け引きがより深くなる一戦になるだろう。
会場の注意点:ポートのホームゲームは、普段ホームとするバンコク都心・クローントゥーイのPATスタジアム(国際試合収容約6,250人と小さく、AFCの大会規格を満たさないため)ではなく、パトゥムターニー県のタマサート・スタジアム(約25,000人収容)で開催される。
バンコク都心からは離れているため、現地観戦を計画する日本サポーターは会場の確認を徹底したい(鹿島サポーター向け情報)。
3. 監督・サラウット・トレーパンという人物
今季の指揮官は、サラウット・トレーパン(愛称「コーチ・ウード」)。
1979年生まれのタイ人で、現役時代は右サイドバックとしてプレーし、2001年東南アジア競技大会(SEAゲームズ)金メダルのタイU-23代表メンバーだった(Wikipedia)。
- ムアントン・ユナイテッド時代から指導者としてキャリアを積み、2020年からポートの監督に初就任。2021-22シーズンには暫定指揮官としてチームを支えた
- その後、ソンクラーFC(2022-23・T3南地区優勝)、スパンブリー、クラビFCで経験を積み2026年3月3日付でポートに復帰
- 復帰即、肺炎で長期離脱した前監督ガマに代わりチームを引き継ぎ、リーグ戦をブリーラムに次ぐ2位でまとめ上げ、タイリーグカップ決勝でBGパトゥム・ユナイテッドを1-0で下してクラブにとって16年ぶりのタイトル(2010年以来2度目)を獲得。その手腕を評価されて2026年5月27日付で正式監督に昇格した(バンコクポスト)
- 就任後の公式成績は13戦11勝2分0敗・無敗(勝率84.6%)。タイリーグ1の月間最優秀監督を2026年4月・5月と2か月連続で受賞している(Wikipedia)
前任のアレシャンドレ・ガマは「タイリーグ史上最成功の外国人監督」と謳われ、ブリーラム・チェンライで国内タイトルを量産した名伯楽。
その離脱はタイサッカー界に衝撃を与えたが、サラウットはより攻撃的で若いチームへの変革を託された形だ。
選手時代から「ポートの顔」として知られ、現地では「コーチ・ウード」の愛称で絶大な人気を誇る。
4. 今季の調子:開幕2連勝で首位、しかし「無敗」の裏側
サラウット体制2年目となる今季(2026-27)は、タイリーグが9月4日開幕。開幕2連勝を飾り、9月12日時点でアユタヤ・ユナイテッドと勝点6で並ぶが、得失点差も同値(+2)のため総得点で上回り首位に立っている(Wikipedia 2026-27 Port season)。
- 第1節(9/5・アウェイ):昇格組ラーシーサライ・ユナイテッドに2-1。先制を許す展開から、ピーラドン・チャムラッサミーの同点弾と、途中出場のマルセル・スカレーゼの決勝点で逆転勝ち
- 第2節(9/11・ホームPAT):ランプーン・ウォリアーズに2-1。エッサム・アル=サブヒがPKで先制し、23歳のティラサック・プェーピマーイが決勝点。後半追いつかれる展開も耐えきった
ただし、見た目ほど順調なわけではない。プレシーズンの最後(8/29)には王者ブリーラム・ユナイテッドにアウェイで1-2と敗れ、昨季優勝クラブには力の差を見せつけられている。
また、サラウット監督の無敗街道は主に昨季終盤(3月以降)のもので、今季開幕戦は昇格組相手に先制されるなどまだ攻守のバランスは完成途上だ。
さらに日程面では注目すべき「非対称」がある。タイリーグは8月末にASEANクラブチャンピオンシップ(ブリーラムが昨季王者)と重なったため開幕が9月にずれ、12月26日から1月31日までリーグが中断する。一方、秋春制1年目のJ1は12月19日で年内の日程を終え、再開は2027年2月13日(Jリーグ公式)。
つまりMD7(2027年2月10日)の時点では、ポートはすでに1月31日のリーグ再開から試合勘を取り戻しつつあるのに対し、柏はまだ公式戦を再開できていないことになる。ここは前提が逆で、柏の方がブランク明けでこの一戦に臨む可能性がある点に注意したい。
柏にとっては「ホームで勝ち切る」ことが重要な意味を持つ。
5. フォーメーションと基本システム
サラウット監督の基本システムは4-2-3-1。
昨季終盤から攻撃的な配置を基本としつつ、サイドバックの高い攻撃参加と、タイ代表経験のある司令塔の配球を軸に組み立てる。
理想とされているサッカー
「ボールを持って主導権を握る」ことが大前提。
外国人枠が今季から登録最大10人・ピッチ上同時出場最大7人へ拡大されたことも追い風に、テクニシャンぞろいの攻撃陣を並べる。
サイドからのクロスと、中央での個人技による崩しを併用し、相手陣地で時間を作るスタイルだ(Yahoo!ニュース)。
現実に起きていること
- 開幕2試合はいずれも先制点を取ってからの勝ち切りで、攻撃力は高いものの、守備は一瞬の隙を見せることがある(ラーシーサライ戦での先制許し、ランプーン戦での追いつかれ)
- 昨季終盤からの無敗街道は「個の質」に支えられている面が大きく、チームとしての完成度はまだ発展途上
- サラウット監督は就任会見で「若いチームにアイデンティティを植え付ける」と語っており、今季はその土台づくりとACLE挑戦の二足のわらじ
6. 主要メンバーと注目選手
2026年9月時点の主力メンバーをもとに整理した(Transfermarkt・2026-27 Port season)。
| 選手 | No. | ポジション | メモ |
|---|---|---|---|
| エリック・スヴィアチェンコ | 28 | DF | 元デンマーク代表CB。ミッドユラン→セルティック→ミッドユランと欧州を渡り歩き、MLSヒューストン・ダイナモから8月下旬に加入。攻撃の起点にもなる大型CB |
| スパナン・ブリーラット | 4 | DF | タイ代表DF。右サイドバックの主力 |
| ピーラドン・チャムラッサミー | 5 | MF | タイ代表歴のある中盤の要。開幕戦で同点弾を記録 |
| カルロス・ジャトバ | 88 | MF | ブラジル人ボランチ。韓国・大邱FCから加入 |
| 志村謄(ノボル・シムラ) | 33 | MF/DF | クラブが誇る日本人選手。元FC町田(レンタル)。2023年6月に完全移籍し在籍4年目で、MFからの配球力に定評 |
| ティラサック・プェーピマーイ | 14 | FW | 23歳のタイ代表FW。第2節でゴールを記録。ポート攻撃の中心 |
| エッサム・アル=サブヒ | 7 | FW | オマーン代表。PK含むプレシーズンでも得点を量産し、開幕戦でPK弾 |
| ジュード・スーンサップ=ベル | 18 | FW | イングランドの名門チェルシーのアカデミー出身の22歳。グリムズビー・タウンから加入 |
| ブルーノ・モレイラ | 11 | FW | ブラジル人ウインガー。インドネシア・ペルセバヤから加入 |
| ソンポーン・ヨット | 1 | GK | 生え抜きに近い正GK。元ムアントン |
ポイントは2つ。外国人枠の拡大を活かした欧州・中東出身の即戦力補強(スヴィアチェンコ、アル=サブヒ、スーンサップ=ベル、ルイ・コスタら)と、タイ国内の若手(ティラサック)の台頭。このバランスが今季ポートの特色だ。市場価値はチーム全体で約800万ユーロ規模(Transfermarkt)。
チーム内でも特に注目なのは、元デンマーク代表・スヴィアチェンコ。34歳まで欧州・北米でプレーした経験豊富なCBは、セットプレーでの高さと前線へのフィードでACLEで輝く可能性が高い。
さらに日本人の琴線に触れるのが志村謄。J2常連のFC町田を知る身には、彼がバンコクの港で主戦場を張っている姿は親しみやすいはずだ。
7. 日本のクラブが気を付けるべきこと6つ
ここまでを踏まえ、柏をはじめ日本勢が対ポートで警戒すべきポイントをまとめる。
① 何と言っても「外国人枠の質」を舐めない。 今季からタイリーグは同時出場7人の外国人を許す異例のルール。スヴィアチェンコ(元デンマーク代表)、アル=サブヒ(オマーン代表)、スーンサップ=ベル(元チェルシーアカデミー)、ブラジル人複数と、個のレベルはもはやJリーグの中位を凌ぐ。柏は「タイだから」と侮らず、個の対決を想定すべき。
② 「若いティラサック」を止める。 23歳のタイ代表FWは開幕から2戦連続ゴールと絶好調。一瞬の抜け出しと裏への走り込みが売りで、マークの受け渡しと最終ラインの連携が生命線。
③ セットプレーの高さに要注意。 スヴィアチェンコ(184cm)と大型ブラジル人CB陣はセットプレーで高さを活かす。コーナーキック・FKでの対応は、普段のリーグ戦以上に堅牢に。
④ 「ホームでの柏」こそチャンス。 ポートはこれまでACLで海外遠征経験が少なく、敵地での戦い方は未知数。柏がホームで先制しペースを握れば、序盤で勝負がつく可能性がある。逆に「バンコクの熱狂」を背に攻めてくる立ち上がりは要注意。
⑤ パトゥムターニーの環境を読む。 ポートのホームゲームはバンコク都心ではなくパトゥムターニー県のタマサート。ただし柏戦はホーム(柏サッカースタジアム)なので、これはアウェイ遠征を計画する日本サポーター向けの話。それでも「ホームとは違う雰囲気」への対応は想定しておきたい。
⑥ シーズン後半のコンディション差(柏に不利な可能性も)。 タイリーグの中断は12月26日〜1月31日、J1の中断は12月19日〜2027年2月13日。柏戦とは別カードだが、MD7(2月10日)時点ではむしろ柏の方が公式戦のブランクを抱えたまま迎える可能性がある点に注意したい。
8. 過去の日本勢・アジア勢との対戦成績
日本ファンにとってポートFCは「C大阪と同じ組だった相手」として記憶に残っている人も多いだろう(日本語版Wikipedia)。
2021年 ACLグループJ(タイ・バンコク集中開催)
- C大阪 3-0 ポートFC(ポートは完敗)
- ポートFC 1-1 C大阪(最終戦で引き分け、C大阪は首位通過)
この年、ポートは広州FCを5-1で粉砕するなど勝点8で3位となり、ラウンド16進出にあと一歩届かなかった。
2024-25 ACL2(AFCチャンピオンズリーグ2)
- グループFを2位で突破(浙江・ライオンシティ・プルシブと同組)
- 決勝トーナメント1回戦で全北現代モータースに2戦合計0-5で大敗
この「全北に0-5」は、前回記事で取り上げた全北現代と対戦経験のあるタイクラブという点で興味深い。しかもその全北は今季も苦戦しており、柏は全北戦(9/16)でその実力を測った直後に、その全北を完封した相手でもないポートと対戦する。つまり「全北に0-5で負けたクラブ」と「全北と互角以上に渡り合えるか」のジャッジの基準が、柏にとっては一つ上の精度で見える相手だ。
柏レイソルとの直接対戦:過去に対戦例はなく、今回が初の公式戦対戦。
まとめ
- ポートFCは1967年創設のバンコクの古豪で、「タールア」の愛称で親しまれるタイ屈指の人気クラブ。昨季はタイリーグ2位とリーグカップ優勝で、ACLE初出場権を獲得
- 今季はサラウット・トレーパン監督体制。2026年3月の就任以来13戦11勝2分0敗の無敗街道で、今季も開幕2連勝で首位に立つ
- 外国人枠拡大(同時7人)を追い風に、元デンマーク代表のスヴィアチェンコら欧州・中東出身の即戦力を大量補強。個の質はもはやJリーグ中位と互角
- 一方で守備はまだ完成途上で、序列で王者ブリーラムには敗れている。「調子のいい古豪」がACLという晴れ舞台でどう戦うかは、まさに未知数
- 柏との対戦は10月14日(水)ホーム・柏サッカースタジアム。2018年以来のACL復帰後、アジアで初めて迎えるホームゲームがこの一戦だ
配信・放送の詳細はJリーグ公式のACLエリートページと柏レイソル公式をチェックしよう。ACLE 2026/27はDAZNが独占配信(地上波・BS中継なし)。柏戦のキックオフは10月14日19:00だ(DAZN)。
試合当日は、DAZNでキックオフから両チームの出方をリアルタイムでチェックしながら観戦するのがおすすめだ。
参考リンク
- 柏レイソル公式:ACLエリート2026/27 https://www.reysol.co.jp/afc202627/index.php
- Jリーグ公式:AFCチャンピオンズリーグエリート https://www.jleague.jp/acle/
- バンコクポスト:Port hand Sarawut full-time job https://www.bangkokpost.com/sports/3261343/port-hand-sarawut-fulltime-job
- Wikipedia:サラウット・トレーパン https://en.wikipedia.org/wiki/Sarawut_Treephan
- Wikipedia:2026-27 ポートFCシーズン https://en.wikipedia.org/wiki/2026%E2%80%9327_Port_F.C._season
- Wikipedia:ACLE2026/27リーグステージ https://en.wikipedia.org/wiki/2026%E2%80%9327_AFC_Champions_League_Elite_league_stage
- 日本語版Wikipedia:ポートFC https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88FC
- Transfermarkt:ポートFCスカッド https://www.transfermarkt.jp/port-fc/startseite/verein/27092
- Houston Chronicle:スヴィアチェンコ移籍報道 https://www.houstonchronicle.com/sports/dynamo/article/erik-sviatchenko-port-fc-22413074.php
- 鹿島サポーター遠征情報:ポートFC編 https://x.com/no12kashima/status/2089679200256950693
- Yahoo!ニュース:タイリーグ外国籍枠拡大 https://news.yahoo.co.jp/articles/38c2d1144ef3d3d56e12d7b8f637fd1deb47e9cd
